2020年の秋、近所の佐藤農園さんと直接取引を始めました。それまでは市場で野菜を買っていましたが、この取引を始めてから料理の組み立て方が変わりました。
市場と直接取引の違い ¶
市場では、その日に必要な野菜を必要な量だけ買えます。便利ですが、野菜がどこでどう育ったかはわかりません。佐藤農園さんから直接仕入れると、野菜の状態と背景が見えます。「今週は雨が多かったから、きゅうりが少し水っぽい」という情報が入ってくる。それに合わせて調理法を変えられます。
週に一度、畑を見に行く理由 ¶
週に一度、佐藤農園さんの畑へ直接行きます。野菜を受け取るだけなら来なくていいのですが、畑を見ると野菜の状態がわかります。土の乾き具合、葉の色、実の大きさ。これを見てから料理を考えると、その野菜に何が合うかが自然とわかってきます。土を触ると、野菜の扱い方が変わる、というのはそういう意味です。
メニューに産地を書くようになった経緯 ¶
佐藤農園さんとの取引を始めた頃、「この小松菜どこのですか」と聞いてくれたお客さんがいました。「近所の佐藤農園さんです」と答えたら、「そうか、だからおいしいんだ」と言ってくれました。それからメニューに産地と生産者名を書くようにしました。隠す理由がないし、書いた方が食べる人の理解が深まると思ったからです。
直接取引のデメリットも正直に ¶
直接取引は、天候や収穫量によって入荷が不安定になることがあります。「今週はナスが取れなかった」という連絡が来ることもあります。その場合は市場で補完しますが、佐藤農園さんの野菜と市場の野菜を並べると、味の違いがわかります。不安定さを受け入れることが、直接取引を続けるための条件だと思っています。
直接取引は手間がかかりますが、料理の質と自分のモチベーションに直結しています。食材の背景を知ることが、シンプルな料理を成立させる土台です。